マンション給水管交換費用相場と工事方法【専門家監修】
更新日:2025年04月30日(水)
マンションの給水管は経年劣化により漏水事故や赤水が発生するリスクが高まります。築古マンションを管理する管理組合にとって、給水管の修繕時期や工事に要する交換費用の見極めは重要課題です。 本記事ではマンション給水管の交換費用相場や工事期間の目安、さらに工事方法の選択基準や業者選定のチェックポイント、依頼時の注意点まで専門家の知見をもとに解説します。給水管トラブルを未然に防ぎ、交換費用を適正価格で発注するためのポイントを押さえましょう。
- 本記事のポイント
- 給水管の耐用年数や劣化兆候から交換時期を学べる。
- マンション給水管交換の工事期間や費用相場を把握できる。
- 信頼できる専門業者の選定ポイントや工事依頼時の注意点がわかる。
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マンション給水管交換の基本知識
マンションの給水管は共用部分(主に縦幹管や各戸までの立ち上がり管)と専有部分(各戸内部の配管)に分かれています。一般的に給水管の耐用年数は30~40年程度とされ、国土交通省のガイドラインでも築30~40年で給水管の取替(更新)を行うよう推奨されています。給水管は普段目に見えない場所にあり劣化に気づきにくいため、定期点検や計画的な更新が重要です。また、給水管が劣化すると共用部・専有部を問わず漏水事故が発生し、階下住戸への被害や生活インフラの停止といった深刻な問題を引き起こします。管理組合として、外壁や防水と同様に給水管も長期修繕計画に沿って適切に維持管理すべき設備と言えるでしょう。
交換が必要な3大兆候
給水設備のプロによれば、次のような劣化症状が見られたら給水管の交換時期と考えるべきです。
赤水や濁った水が出る
蛇口から赤茶色や白く濁った水が出る場合、給水管内部のサビが水に混入しています。特に鉄製の古い給水管では内部腐食により赤水が発生し、水質悪化や異臭の原因にもなります。赤水が常時出る状態は管内の腐食がかなり進行しているサインであり、早期に交換を検討すべきです。
漏水(水漏れ)が発生する
給水管からの漏水は深刻な劣化兆候です。床下や天井裏の見えない部分で配管が破損し漏水すると、発見が遅れて階下住戸の天井や壁に甚大な損害を与えることがあります。特に経年した銅管の継手(エルボー)部分などでピンホール漏水が起きやすく、放置すれば被害拡大と修繕費増大に直結します。
水圧低下や水の出が悪い
複数の蛇口で水量が明らかに減少したり、水の出が悪くなる場合も劣化の兆候です。古い給水管の内壁にサビやスケール(鉱物成分)が蓄積して管径が細くなると、水圧低下や断水に近い状態を招きます。高圧洗浄などで改善しない場合、給水管自体の交換が必要と言えるでしょう。
これらの症状が一つでも見られたら注意が必要ですが、築年数が長く未交換の給水管であれば早めの調査・対策が肝心です。管理組合で専門業者に劣化診断を依頼し、給水管更新のタイミングを逃さないようにしましょう。
マンション給水管の交換費用相場
マンション全体の給水管交換工事には数百万円規模の費用がかかり、戸あたりの負担額に換算すると共用部のみで20~50万円程度、専有部内の配管も含めると1戸あたり100万円を超えるケースもあります。費用は工事範囲や建物規模によって大きく変動しますが、管理組合として事前に大まかな相場観を把握しておくことが重要です。
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」においても、給排水管更新工事は大規模修繕の中でも高額な部類に位置づけられています。また、実際のマンション事例では給排水管更新に数億円を要し、国の補助金制度(長期優良住宅化リフォーム補助)を活用して費用負担を軽減したケースも報告されています。こうした事例からも、給水管交換工事はマンション修繕費用の中で大きな比重を占めることがわかります。
工事費用の内訳としては、共用部の立て管交換費、人件費、資材費に加え、各戸への分岐管やメーター周りの配管更新費、さらに専有部内工事を行う場合は室内のキッチン・浴室・洗面などの配管交換費および壁床復旧費が発生します。専有部工事費用は原則各区分所有者の負担ですが、老朽化が全体的に進行している場合には共用部工事のタイミングで一括実施する方が効率的です。その際、専有部の費用負担方法(各戸負担か、一部を修繕積立金から出すか)について管理組合で合意形成を図る必要があります。いずれにせよ、給水管交換工事は高額になるため、長期修繕計画に予め組み込み計画的に修繕積立金を確保しておくことが望ましいでしょう。
マンション給水管の交換工事期間
マンション全体の給水管交換工事には工期が数週間から数ヶ月程度必要です。工事規模や方法によって期間は異なりますが、居住者の生活に支障が出ないよう段階的に施工されるため、想定以上に長期化するケースもあります。
給水管の更新工事(新規配管への交換)では、既存の古い配管を撤去しながら新しい配管に切り替える必要があり、作業範囲も建物全体に及ぶため時間を要します。専門業者の解説によれば、一般的なマンション給排水管の更新工事は少なくとも数週間、規模によっては数ヶ月に及ぶとされています。各住戸ごとに順番に工事を行い、作業中は断水を伴うため一斉には進められないからです。
工期を短縮するため、施工業者は通常、ラインごと(系統ごと)に順次工事を進めます。たとえば縦管ごとに日程を区切り、その系統に属する住戸だけを断水して配管交換する、といった手順です。一日の作業時間内で給水を再開できるよう工程管理し、夜間は断水しないよう配慮します。それでも全戸の工事完了までには延べ日数がかかり、その間は断続的に居住者へ協力(在宅対応や断水許容)をお願いする必要があります。
一方、更生工法(既存管内面を樹脂塗装などで補修)の場合は開口箇所が少なくて済み、既設配管を残したまま施工できるため工期を数日に圧縮できるのが利点です。更生工事を採用する場合は各住戸への立ち入り時間も短くて済みますが、更生できないほど劣化が激しい配管は結局更新せざるを得ないため、建物全体の状況を見極めて適切な工法を選ぶことが大切です。
工事方法の選択基準
給水管工事の方法は大きく分けて「更新工事(新規配管への交換)」と「更生工事(既存配管の内面補修)」の2種類があり、選択の基準は配管の劣化程度、残り寿命、予算、工期要請などです。劣化が著しく耐用年数を超えていれば更新工事が基本となり、まだ軽度の腐食で予算や時間に制約がある場合は更生工事を検討する、といった判断になります。
更新工事は、配管そのものを新品に交換するため費用は高額になりますが、30年以上の耐久性が期待できます。これに対し、更生工事は既存の配管を再生する工法であり、比較的安価で工期も短いというメリットがあります。
更生工事によって延命できる期間は、これまでおおむね10年程度が目安とされてきましたが、近年では20年程度の保証を掲げる工法も登場しており、更新工事と同様に長期的な延命が可能なケースもあります。
ただし、更生工法にはさまざまな種類があり、対応できる配管の材質や効果にも違いがあるため、建物の劣化状況や配管の状態に応じた適切な工法の選定が重要です。
交換費用を安くするためのチェックポイント
結論: 給水管交換工事の成功は信頼できる専門業者選びにかかっています。不適切な業者に依頼するとずさんな工事や高額請求のリスクがあるため、業者選定時には以下のポイントを必ずチェックしましょう。
水道局指定工事店であること
日本の水道法では、水道工事は各自治体に指定された「指定給水装置工事事業者」しか施工できません。必ず自治体(水道局)の指定業者に依頼するようにし、そうでない業者は避けてください(東京都水道局も「給水装置工事は指定業者に依頼を」と呼びかけています)。
類似マンションでの実績・経験
自分たちのマンションと規模や築年数が近い物件での給排水管更新工事実績が豊富な業者を選ぶと安心です。公式サイトに施工事例を写真付きで掲載している会社は実績をオープンにできる信用の証と言えます。過去の実績から、住民対応のノウハウや技術力も推し量れます。
調査・提案力があること
信頼できる業者は工事ありきではなく、まず現地調査をしっかり行い最適な工法を提案してくれます。更新工事と更生工事の両方に精通し、自社で一貫して施工できる業者であれば、中間マージンもなく公平な立場で最善策を示してくれるでしょう。
見積内容が明確で適正価格
複数社から相見積もりを取り、内訳明細を比較検討することは必須です。見積もり項目が不明瞭な業者や極端に高額・安価な提示をする業者には注意が必要です。一般に、大手ゼネコン経由だと下請け構造で割高になりがちなので、専門工事業者への直接発注で中間マージンを省くのも一つの方法です。
アフターサポートと保証
工事後のアフターサービス体制(万一の緊急漏水時の24時間対応可否など)も確認しましょう。配管工事には通常5~10年程度の保証が付くことが多いですが、保証内容や期間を契約前にしっかり確認することが肝心です。長期にわたる付き合いになるため、誠実に対応してくれる業者かどうかも重要な見極めポイントです。
これらの点を総合的にチェックし、必要に応じて管理組合で専門家(コンサルタント)の意見も仰ぎながら業者選定を行いましょう。東京都など自治体の水道局サイトで指定業者リストが公開されているので参考にするのも有効です。また、見積依頼はなるべく早めに行い、工事内容・日程・費用・アフターケアまで十分に業者と打ち合わせてください。
交換工事を依頼するときの注意点
最後に、管理組合が給水管交換工事を発注する際に留意すべき重要ポイントを3つ挙げます。
断水計画と住民周知の徹底
工事中はどうしても一定時間の断水が必要になります。事前に施工業者と協議して断水時間帯や回数を最小限に抑える工程を組み、スケジュールを住民に周知徹底しましょう。断水時間は生活に直結するため、万一工事が遅延すると断水が長引き大きな迷惑となります。トラブル防止のため、余裕を持った工程管理と迅速な進捗対応が重要です。また、断水中の仮設水源の確保や予備日設定などリスクヘッジも検討してください。
全住戸で工事を完了させる
共用部の縦管交換だけ行っても、各戸内の配管がそのままでは古い管から漏水するリスクが残ります。工事に非協力的な住戸が出るとそこがボトルネックとなるため、全住戸の合意形成を事前に図り、可能な限り一斉に専有部配管も更新することが理想です。一部の住戸だけ工事未実施だと漏水リスクが高まり、結局その住戸で事故が起これば周囲に被害が及びます。専有部に立ち入る必要があるためプライバシーや日程調整の課題がありますが、管理規約の定め(緊急時の立入権など)も踏まえて丁寧に居住者の理解を得ましょう。
契約内容とアフターケアの確認
工事請負契約を締結する際は、見積書の内訳や契約条項を細部まで確認します。工事範囲や使用材料、工期、支払い条件、瑕疵保証の範囲・期間などを書面で明確に定めましょう。特に漏水事故に備えた工事保険加入の有無や、工事後の定期点検サービスなどアフターケアについても取り決めておくと安心です。不明点は契約前に業者に質問し、曖昧なまま進めないことが肝心です。また、工事中・引き渡し時には立会い検査を行い、図面や写真付きの報告書を受け取って記録を残しておきましょう。
以上の注意点を踏まえ、管理組合が主体となって計画的かつ円滑に給水管更新工事を進めることが大切です。一連の準備や交渉には時間を要するため、早め早めの対応を心掛けましょう。
まとめ:交換費用を適正価格で確実な工事を実現するために
築年数が経ったマンションでは、給水管の老朽化は避けられず、放置すれば漏水や赤水など生活への支障や資産価値の低下を招きます。管理組合として、劣化兆候を見逃さず適切な時期に給水管の更新工事を実施することが肝要です。その際、この記事で述べた費用相場や工期の目安を参考にしつつ、信頼できる専門業者を選定し、住民と十分にコミュニケーションを図りながら工事計画を立てることが成功のポイントとなります。
幸い、公的機関のガイドラインや補助制度などマンション給排水設備の改修を支援する情報も数多く提供されています。国交省の資料や自治体の助言サービスも活用し、客観的な根拠に基づいた判断を下しましょう。例えば、国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン」では給水管更新の周期目安が示されていますし、自治体によっては老朽配管の無料診断が行われているケースもあるようです。こうしたエビデンスを共有することで、組合内の合意形成もスムーズになるはずです。
最後に、マンションの命綱である給水管工事を適正価格で確実に行うためには、早期計画と専門家の知見が不可欠です。十分な準備期間を取り、複数社からの見積比較や専門家アドバイスを経て納得のいく計画を策定しましょう。そうすることで、住民の皆様にとって安心・安全な暮らしを将来にわたって守り、マンションの価値をしっかりと維持し続けることができるでしょう。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者