マンションの給水管調査費用はいくら? 依頼の仕方やメンテナンスするときの注意点
更新日:2025年04月30日(水)
マンション管理組合の皆様にとって、給水管の老朽化対策は無視できない重要課題です。築年数の経過したマンションでは給水管からの漏水事故リスクが高まり、生活に直結する問題として区分所有者の関心も高まっています。そのため、定期的な調査を計画することは重要なことですが、「調査費用がとのくらいかかるのか?」という見通しが立たないと、なかなか実行に踏み出しにくいものです。 本記事では、マンションの給水管調査費用の相場や依頼方法、注意点について解説します。マンション管理組合が給水管調査費用を検討・実施する際の参考になれば幸いです。
- 本記事のポイント
- マンションの給水管調査の目的や具体的な調査方法について学べる。
- 給水管調査の費用相場や調査費用が高額になる理由がわかる。
- 給水管調査を依頼する際の業者選定のポイントや注意点を把握できる。
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マンションの給水管調査とは?
給水管調査とは、マンションの給水設備(主に各種給水配管)が劣化していないかを専門的に点検・診断することです。配管内部の腐食状況や漏水リスクを把握し、必要な修繕計画を立てるために行われます。
給水管はコンクリート壁の中や床下に埋設されており、目に見えない部分で劣化が進行します。調査を実施すれば、老朽化によるサビの発生やピンホール(小さな穴)腐食の有無、水漏れの兆候などを把握できます。適切な診断によって劣化状況を把握することが、大規模修繕計画の策定や給水管更新時期の判断に不可欠です。
具体的には、ファイバースコープ(内視鏡カメラ)による配管内部観察や、超音波厚さ測定、X線透視、抜管(配管サンプル採取)検査などの手法が用いられます。例えば内視鏡を配管内に挿入すれば、管内のサビの付着具合や詰まり具合、ライニング管であれば内面樹脂の剥離状況まで確認できます。
マンションの給水管調査費用はいくら?
給水管調査の費用は調査範囲や手法、マンションの規模によって大きく変動しますが、数十万円程度から数百万円に及ぶケースもあります。簡易な内視鏡調査のみの場合は比較的安価(数万円~十数万円単位)ですが、調査報告書の作成や説明会対応まで含めた包括的な診断になると100万円以上かかることもあります。
費用に幅があるのは、調査の深さ・方法によって必要な人員や日数が異なるためです。例えば内視鏡カメラで主要な給水経路を点検するだけであれば1日で完了し、費用も低めに抑えられます。一方、全戸の給水管を対象に超音波測定や抜管検査を実施し、結果報告書を作成して組合向け説明会まで行うようなケースでは、複数日の作業と専門スタッフの動員が必要となり費用が高額になります。また、マンションの戸数や階数が多いほど調査箇所も増えるため、その分コストが増加します。
劣化診断にかかる概算費用の一例は以下の通りです。
- 作業日数1日、専門スタッフ3名・専用機材持ち込みによる調査
- 調査報告資料の作成と説明会参加
このように各項目ごとに20~40万円程度の費用が目安で、全項目を実施すると合計100万円以上になるケースもあるとされています。具体的な費用イメージとしては、小規模マンション(例:数十戸程度)で主要箇所のみ簡易診断を行う場合は数十万円以下に収まることもあります。例えば数戸分の配管を内視鏡でチェックし、明らかな異常がないかを確認する程度であれば、1日作業・数万円~十数万円×日数(戸数に応じて)となり、全体で数十万円規模になるでしょう。逆に、大規模マンション(例:100戸以上)で全戸の給水管を詳細調査し、さらに今後の更新工事計画まで立案するような包括サービスを依頼すれば、100万~200万円以上の費用を見込む必要があります。
また、調査のみならず調査後の工事提案や見積り作成まで依頼する場合はコンサルティング費用が加算されることもあります。管理組合としては事前に調査の範囲(共用部のみか専有部も含むか)、調査手法、報告書の有無などを業者と打ち合わせ、見積もりを複数入手して比較することが大切です。
マンションの給水管調査を依頼する方法
給水管調査を依頼する際は、信頼できる給排水設備の専門業者またはコンサルタントに相談するのが基本です。
マンションの給水設備は専門性が高いため、適切な調査には水道法で指定された給水装置工事事業者など、資格を持つプロの関与が不可欠です。管理組合だけで独自に調査することは難しく、施工実績が豊富な専門会社に任せることで漏れなく診断できます。国土交通省も、大規模修繕工事前の事前調査では専門機関による劣化診断を適切に実施し、修繕内容や費用を把握することが重要だとしています。
実際に給水管調査を進める際は、管理組合が主体となって以下のような手順で進めるのが一般的です。
まずは、築年数や過去の漏水履歴などをもとに、調査の必要性を管理組合内で検討します。劣化の兆候が見られたり、建物全体の保全計画に基づいて調査のタイミングであると判断した場合は、調査実績のある専門業者の情報を集めましょう。インターネット検索や業界団体、他の管理組合の事例などを参考に、信頼できそうな業者をリストアップし、数社にコンタクトを取って現地調査を依頼します。
見積もり取得時には、以下の点を確認しましょう。
- 調査範囲(共用部のみか、専有部も含むか)
- 調査手法と所要日数
- 水道の断水の有無
- 報告書や写真付きの記録提供の有無
- 見積内容の内訳と費用明細
得られた情報をもとに、管理組合内で比較検討を行い、不明点があれば業者に確認します。そして、総合的に信頼できる業者を選定し、理事会や総会で予算を承認のうえで契約を締結します。その後は、調査日程を調整し、必要に応じて各居住者へ事前の周知を徹底した上で、調査を実施する流れになります。
なお、修繕計画については専門家の提案を受けることも有益です。プロと伴走しつつ進める姿勢が成功の鍵となるでしょう。
マンションの給水管調査を依頼するときの注意点
給水管調査を依頼する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。ここから、特に重要な注意点を3つ説明します。
業者の選定は慎重に行い、必ず相見積もりを取ること
まず注意すべきは、調査を依頼する業者選定を慎重に行うことです。安易に一社に決めず、複数の業者から見積もりを取り、価格と調査内容を比較検討しましょう。また、水道局指定の業者など信頼できる資格を有する会社であることを確認することも重要です。
マンションの給排水工事は法律上、水道局の指定工事店でなければ施工できないと定められています。調査のみであっても、給水設備に手を触れる作業(例えば蛇口やメーター部の取り外し等)が発生する場合がありますから、やはり資格のある業者に依頼すべきです。不適切な業者に依頼すると、調査精度が低かったり、必要以上の高額工事を提案されたりするリスクもあります。複数の業者に声をかければ、見積もり内容の妥当性を比較できますし、各社の対応の丁寧さや専門性も見極めやすくなります。
調査内容・範囲とスケジュールを事前に十分調整すること
次に重要なのは、調査の具体的な内容や範囲、日程について事前に十分調整することです。とくに調査中に給水を停止する必要がある場合や、居住者の専有部分に立ち入る場合は、事前周知とスケジュール調整を綿密に行いましょう。
給水管調査では、方法によっては一時的に断水が必要になったり、各戸の中に入って作業したりするケースがあります。例えば共用部のメーター直下などに内視鏡を挿入する際や、専有部の蛇口を外して検査機器を繋ぐ場合には、その間該当戸は給水が使えなくなります。
また、X線調査の場合は作業中その周囲の立ち入りを制限する必要もあります。こうした作業は居住者の生活へ影響を及ぼすため、事前の告知と理解が欠かせません。さらに、断水作業には役所や水道局への申請手続きが必要な場合もあり、調査スケジュールに組み込んでおく必要があります。
専有部の老朽配管にも目を向け、結果に基づくフォローアップ策を検討すること
三つ目の注意点は、調査後のフォローアップを念頭に置くことです。調査結果で問題が見つかった場合の対応策(補修や更新工事)の計画まで含めて検討しておきましょう。また、共用部だけでなく専有部(各戸内)の給水管にも老朽化リスクがあることを踏まえ、必要に応じてそちらの調査・対策も検討する姿勢が大切です。
給水管調査はあくまで現状把握です。もし「サビが進行している」「一部で漏水の兆候がある」といった診断結果が出た場合、迅速に補修工事や更新工事の計画を立てましょう。
また、日本のマンションでは従来、各戸内(専有部分)の配管は区分所有者の自己責任とされ、長期修繕計画の対象外とされてきました。しかし築25年以上のマンションでは、むしろ漏水事故は専有部配管で発生するケースの方が圧倒的に多い現状があります。
国交省も2022年にガイドラインを改定し、専有部の給排水管についても更新時期の目安を示して長期修繕計画に保全費用を盛り込むことを推奨し始めています。したがって管理組合としても、「共用部だけ見ていれば良い」という考えを改め、専有部配管の状況にも目を配る必要があります。
調査依頼で信頼できる業者を見極めるポイント
給水管調査を安心して任せられる業者を見極めるためのポイントを3つご紹介します。前述の注意点と重なる部分もありますが、業者選定時に特に注目すべきチェック項目です。
水道局指定工事店など適切な資格・許可を持っているか
信頼できる業者かどうか判断する基本ポイントは、その業者が適切な資格・許可を取得しているかです。具体的には、水道法にもとづく指定給水装置工事事業者であるか、建設業法上の管工事業許可を持っているかなどを確認します。東京都であれば「東京都指定給水装置工事事業者」および「指定排水設備工事事業者」に登録されている会社かどうかが目安になります。これらの情報は各自治体の水道局や下水道局のホームページで公表されており、企業名検索で確認可能です。また、業者の公式サイト上で資格や許認可番号を明記している場合も多いのでチェックしましょう。資格保持はその会社の技術的信頼性と法令遵守性を示す重要な指標です。
施工実績が豊富で公式に事例を公開しているか
次のポイントは、その業者の実績と透明性です。マンション給水管の調査・改修の実績がどれくらいあるか、過去の施工事例や顧客(管理組合)の声を公式に公開しているかを確認しましょう。公式サイトに施工事例集や写真を掲載している会社は、自社の実績に自信と誇りを持っていると考えられます。実名のマンション名や施工内容、ビフォーアフター写真などが掲載されていれば、発注者から許可を得て公開しているはずであり、企業としての誠実さ・信頼性の裏付けになります。
見積もりが明瞭かつ丁寧で、問い合わせ対応など信頼できるか
最後のポイントは、見積もりや問い合わせ対応など顧客対応の姿勢です。信頼できる業者は、見積もり段階から費用項目を分かりやすく示し、不明点にも丁寧に説明してくれます。質問や要望に対して迅速かつ真摯に対応してくれるか、担当者のコミュニケーションが円滑かといった点も総合的に判断しましょう。
まとめ|専門家と伴走しよう
マンションの給水管調査は、将来の大きなトラブルを防ぎ、居住者の安心・安全な生活を守るための大切なメンテナンス活動です。費用は決して安くありませんが、適切な時期に適切な診断を行うことで、不要な工事を避けたり計画的な資金準備が可能になったりと、結果的には組合の負担軽減にもつながります。
実際、早めで綿密な劣化診断は漏水などのトラブルを未然に防ぎ、将来の工事費用を抑える効果があることが専門家からも指摘されています。もし「うちのマンションはもう築○○年だけど給水管はまだ一度も更新していない」「最近赤水や水圧低下が気になる」といった状況であれば、ぜひ一度専門会社による調査を検討してみることをお勧めします。
調査の実施にあたっては、本記事で解説したように信頼できる業者選びと組合内での十分な事前調整が重要です。国土交通省が出しているガイドラインなどを活用しながら、経験豊富な専門家と二人三脚で給水管の維持管理に取り組みましょう。
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本記事の著者

鵜沢 辰史
信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。
本記事の監修者
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遠藤 七保
大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。
二級建築士,管理業務主任者