ディー・エヌ・エー(DeNA)グループ 一級建築士事務所

スマート修繕
0120-14-3704

24時間対応通話料・相談料 無料

築50年マンションの耐震診断と補強工事費用:必要性と進め方

更新日:2026年01月30日(金)

築40年以上経過したマンションでは、新耐震基準(1981年施行)以前の旧耐震基準で建てられたものが多く存在します。旧耐震基準の建物は現行基準に比べ耐震性能が低く、大地震で倒壊・崩壊するリスクが高いため、耐震診断や補強工事による安全性向上が不可欠です。 実際、2011年東日本大震災や2016年熊本地震では1981年以前の耐震基準で建てられたマンションの被害が甚大で、居住者の生命・財産だけでなく地域の復旧にも深刻な影響を及ぼしました。こうした背景から耐震診断や耐震補強工事の必要性が高まっており、国や自治体も耐震化を強く促進しています。

本記事のポイント
  • 旧耐震基準のマンションが抱える耐震リスクと診断・補強の重要性を理解できる。
  • 耐震診断・補強工事にかかる費用相場と費用に影響する主な要因を学べる。
  • 国や自治体の補助制度、合意形成・資金調達の進め方など実務的なポイントがわかる。

耐震診断・耐震補強工事の必要性

日本の建築基準法は、1978年の宮城県沖地震の教訓を踏まえ、1981年に大きな改正が行われました。この改正により、震度6強から7程度の大地震でも倒壊しないことを目標とした「新耐震基準」が導入されています。一方で、築50年前後、すなわち1980年代前半以前に建てられたマンションの多くは、改正前の「旧耐震基準」に基づいて設計されている可能性があります。

旧耐震基準は、主に震度5強程度までの中規模地震を想定したものであり、震度6強以上の大地震が発生した場合には、致命的な損傷を受けるおそれがあります。現行基準と比較すると耐震性能が十分とは言えず、地震発生時に建物の倒壊や崩壊によって居住者の生命を危険にさらすだけでなく、瓦礫の発生による周辺被害や地域の復旧・復興を妨げる要因にもなりかねません。

特に、1階部分が柱のみで構成されるいわゆるピロティ構造のマンションは、地震時に特定階へ被害が集中しやすく、倒壊リスクが高いことが指摘されています。こうした状況を受け、東京都をはじめとする自治体では、旧耐震マンションを対象とした耐震診断や部分的な補強工事に対する補助制度の拡充など、支援策を進めています。

また、国土交通省は耐震改修促進法に基づき、一定規模以上の旧耐震建築物に対して耐震診断を義務付けるなど、法制度の整備を進めてきました。具体的には、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けたマンションが対象となり、行政は管理組合に対して耐震性の確認と必要な対策の実施を促しています。多くの自治体でも、耐震診断や耐震補強工事にかかる費用の一部を補助する制度を設け、高経年マンションの耐震化を後押ししています。

しかしながら、現状では旧耐震マンションにおける耐震診断の実施率や、耐震補強工事まで完了している事例は依然として少なく、とくに補強工事の実施に至っている割合は数パーセント程度にとどまっているといわれています。その背景には、診断や工事に伴う費用負担の大きさや、区分所有者間での合意形成の難しさなど、マンション特有の課題が存在していると考えられます。

耐震診断・補強工事にかかる費用と主な要因

耐震診断から補強設計・補強工事までの費用は、マンションの構造や規模、所在地によって大きく異なります。一般に鉄筋コンクリート造(RC造)マンションの場合、延床面積1,000~3,000㎡規模で耐震診断にかかる費用は約2,000~3,500円/㎡が目安です(設計図書が揃っている場合)。

延床面積が小さい建物ほど単価は割高になり、1,000㎡未満だと2,000円/㎡以上になります。また竣工時の図面がない場合は現地調査や図面復元の手間が増えるため、診断費用はさらに高くなる傾向があります。鉄骨造(S造)のマンションでは診断費用の目安が約2,500~4,000円/㎡(同条件)とされており、構造形式によっても費用幅があります。

耐震診断の結果、耐震性が不足していると判明した場合には、詳細な補強案の検討・設計(耐震補強設計)を経て工事に進みます。補強設計にかかる費用は物件規模によりますが、概ね数百万円程度(大規模物件では数千万円)を要するケースが多く、設計監理料として工事費の10~15%程度が目安ともいわれます(補助制度により一部助成あり)。

その後の耐震補強工事費は、補強方法や建物規模により幅がありますが、中層マンションでは総額数千万円から数億円規模になることも少なくありません。一戸あたり数十万~数百万円の負担増となるのが一般的で、構造の複雑さや補強範囲の広さによって費用は大きく変動します。また、都市部か郊外かといった立地条件も影響し、都市部では人件費や仮設費用が割高になる傾向があります。

主な費用に影響する要因をまとめると次のとおりです。

建物構造

RC造かS造か、階数や形状によって診断・工事の手法が異なり費用に差が出る。RC造は壁量増加などの補強が中心、S造は接合部補強やブレース追加など工法が異なるため費用幅も異なる。

建物規模

延床面積や戸数が大きいほど単位面積あたり費用は割安になる(規模の経済が働く)が、総工事費は当然ながら高額になる。小規模マンションは逆に単価が割高になりやすい。

耐震性能の不足度

耐震診断で算出される耐震指標(Is値など)がどの程度不足しているかによって、必要な補強量や工事範囲が変わる。深刻な場合は柱・梁の補強や壁増設など大掛かりな工事となり、費用も増大。

立地条件

都市部の狭小敷地や隣接建物との兼ね合いで工事ヤード確保が難しい場合、仮設工事費や作業効率低下で費用増となる。また地域の物価や人件費水準により工事単価も異なる。

耐震化に活用できる補助制度・助成金

耐震診断や耐震改修に要する費用負担を軽減するため、国土交通省および各自治体が補助金・助成制度を整えています。基本的に分譲マンションの管理組合や賃貸マンションのオーナーが対象で、旧耐震基準に該当する建物について所定の補助が受けられます。

補助内容は自治体によって異なりますが、主な都市の例を挙げます。

東京都(特別区等)

各区で耐震診断・補強設計・耐震改修工事それぞれに補助があります(東京都は区市町村の補助事業を支援)。例えば千代田区では旧耐震マンションの管理組合に対し、診断・設計・工事費用の一部を助成しており、令和7年度実績では耐震診断・補強設計・改修工事それぞれに補助枠が設けられました。また東京都は、緊急輸送道路沿道の旧耐震マンションについて、耐震診断費の所有者負担分を都が全額負担する制度も発表しています。

横浜市

1998年よりマンションの簡易耐震診断、1999年より精密耐震診断への補助制度を開始し、現在も継続しています。横浜市の「マンション耐震診断支援事業」では、管理組合が依頼する専門家の耐震診断費用の2分の1補助(上限150万円程度)などが受けられます。耐震改修工事に対しても別途助成制度があり、耐震改修設計費や工事費の一部を市が補助します。

大阪市

大阪市は耐震化率95%を目標に「マンション耐震化緊急支援事業」を設け、分譲・賃貸マンションを対象に診断から工事まで段階的な補助を行っています。具体的には、耐震診断費は3分の2(上限200万円/棟)、耐震改修設計費も3分の2(上限300万円/棟)を補助し、耐震改修工事費は23%(上限3,000万円/棟)を補助する仕組みです。さらに補助対象となる工事費には延床面積あたりの上限単価も定められており、大規模マンションほど高額な補助が受けられるよう調整されています(※補助金交付には申請期限や予算枠があります)。

上記のほか、神奈川県や大阪府など都道府県による広域的な支援策、金融支援(低利融資や融資あっせん)制度などもあります。いずれの補助制度も事前相談や申請手続きが必要なため、管理組合は早めに自治体窓口や専門家に相談し、自分たちのマンションが利用できる制度を確認することが重要です。

工事実施までのフローと合意形成・資金調達の課題

耐震補強工事を実施するまでには、耐震診断の実施決定から工事完了までの長いプロセスを経る必要があります。一般的な流れをステップに沿って説明します。

事前準備・情報収集

理事会や管理会社が中心となり、マンションの図面や建築確認書類、劣化状況などを整理します。同時に自治体の相談窓口や専門家に耐震診断の内容・費用目安、補助制度の有無などを相談し、区分所有者への説明資料の準備を行います。

耐震診断の実施決議

管理組合の総会で耐震診断を実施するかを議決します。通常、耐震診断の実施自体は管理組合の業務範囲内で普通決議(過半数)で承認可能ですが、数百万円規模の支出を伴うためあらかじめ合意形成に努めることが大切です。総会決議の前には事前説明会を開いて計画趣旨や費用見込み、補助金活用策などを共有し、できる限り組合員の理解を得ておきます。こうした丁寧なプロセスにより、その後の議決がスムーズに進みやすくなります。

耐震診断の実施と結果報告

専門の建築士事務所に依頼して耐震診断を行います。調査・解析には数か月かかることもあります。診断結果(Is値など耐震評価値)と補強の必要性について報告書が提出され、理事会で内容を精査したうえで組合員に報告します。耐震性能に問題がない場合はそれで終了ですが、耐震性不足(倒壊の危険性あり)と判定された場合は次のステップへ進みます。

補強方針の検討・補強計画案作成

耐震性不足と判明した場合、建物の構造や損傷状況に応じた補強工法の検討が必要です。構造設計の専門家(構造エンジニア)に依頼して耐震補強計画案を作成します。この段階で補強工事の概算費用や工事範囲、工程期間も示されます。補強工法にはブレース設置や壁増設、柱・梁の巻き立て補強、免震レトロフィットなど様々ありますが、マンションの構造種別や居住者負担との兼ね合いで最適案を検討します。補強計画案ができたら理事会で内容を確認し、住民説明会で組合員に説明します。質疑応答を経て必要に応じ計画案の修正も行い、最終案をまとめます。

補強工事実施の合意形成(資金計画策定)

耐震補強工事の実施については、管理組合総会において補強計画案および資金計画案を諮り、総会決議によって実施を決定します。耐震補強工事は建物の安全性を高める重要な変更ですが、共用部分の形状・効用に著しい変更を伴う場合は特別決議の対象となることが多く、合意形成のハードルが高いことには変わりありません。

ただし、2026年4月施行の区分所有法改正により、従来の「区分所有者数および議決権数の各3/4以上」を基準とする制度に加えて、総会に出席した区分所有者およびその議決権の過半数による決議(所定の条件下)で合意が成立する仕組みも導入され、一定程度決議の成立がしやすくなっています。

それでも費用面では管理組合の修繕積立金だけでは賄いきれない場合が大半であり、資金調達計画の検討が不可欠です。具体的には自治体助成金や融資制度の活用、不足分として金融機関からの共用部改修向け長期融資や一時金徴収などの選択肢があります。これらについて理事会や専門家がシミュレーションし、無理のない返済計画・負担配分を策定したうえで総会に提案します。資金計画も含めた議案が総会で承認されれば、耐震補強工事に着手できます。

施工業者の選定と工事契約

総会決議後、補強工事を発注する施工業者を選定します。通常は複数の施工会社から見積もりを取得して比較検討し、工事内容・価格・実績などを総合評価して決定します(管理組合だけで判断が難しければコンサルタントを起用する方法もあります)。契約にあたっては工事請負契約書や重要事項説明書を締結し、工期や保証内容などを確認します。

耐震補強工事の施工

工事期間中、居住者は生活しながら工事に協力する形になります。騒音・振動や共用施設の利用制限など負担も伴うため、施工会社や管理組合は事前に丁寧な説明と日程調整を行います。工事内容によりますが、数か月~1年以上の期間を要することもあります。工事監理者(設計者等)が工事品質をチェックし、適切に補強工事が行われているか確認しながら進めます。

完了検査と効果確認

工事完了後、所管行政庁への完了届出や必要に応じた検査を経て、耐震補強工事が正式に完了します。補強後の耐震性については再度耐震診断を実施し、目標の耐震性能が確保できたことを確認するのが望ましいでしょう。補強工事完了により、その建物は「耐震性が向上したマンション」として資産価値が高まる効果も期待できます。実際、耐震改修工事後にマンションの販売価格が上昇したケースも報告されており、安全面だけでなく経済的なメリットも得られる可能性があります。

以上が耐震診断から耐震補強工事に至るまでの大まかな流れですが、実務上、多くの管理組合がつまずきやすいのが「合意形成」と「資金調達」の段階です。なかでも費用負担に関する問題は大きく、耐震診断そのものに踏み切れない管理組合も少なくありません。

その背景には、「診断を行って耐震性不足と判定されても、補強工事に充てる資金の見通しが立たないのであれば、診断を実施しても意味がないのではないか」という消極的な考え方が存在します。実際、修繕積立金に余裕がないマンションでは、限られた資金を他の修繕項目に充てざるを得ず、耐震対策が後回しにされてしまうケースも見受けられます。

しかし、仮に耐震性に課題を抱えたまま大規模マンションで対策の先送りが続けば、地震発生時の被害は甚大なものとなりかねません。人命への影響はもちろん、建物被害が周辺地域の安全や復旧の妨げとなるリスクも高まります。

また、合意形成の面では、高齢の区分所有者が多く将来の負担増に慎重な場合や、賃貸に出しているオーナーが費用負担に消極的な場合など、立場や利害の違いによる調整が必要となります。このため、短期間で結論を出すことは難しく、管理組合には丁寧な説明と時間をかけた話し合いが求められます。

耐震診断や補強工事を円滑に進めるためには、課題を先送りせず、専門家の助言も得ながら、全員が納得できる現実的な計画と負担方法を粘り強く模索していく姿勢が重要です。

資金面では、前述の補助金制度の活用に加え、民間ローンや公的融資制度を組み合わせる例が多くみられます。住宅金融支援機構の【マンション共用部分修繕融資】(長期固定金利で借入可能)など、マンション改修向けの低利融資制度も検討すると良いでしょう。また、各戸の一時金徴収については高齢者世帯等への配慮も必要です。場合によっては管理組合で機構債(区分所有者全員の同意で発行するマンション債)を発行し、長期にわたり各戸が償還していくスキームを採ることもあります。

いずれにせよ、安全性向上のための投資であるとの共通認識を組合員間で醸成し、「このマンションにこれからも安心して住み続けるために耐震化は不可欠な取り組みだ」という合意を形成することが最も大切です。

おわりに:耐震化は安心の未来への投資

築年数の経過したマンションの耐震化は、決して先送りできない喫緊の課題です。日本は地震大国であり、「次の大地震はいつ起きてもおかしくない」という前提で備える必要があります。耐震診断や耐震補強工事には多額の費用がかかりますが、居住者の生命と資産を守る保険と考えれば決して高い投資ではありません。耐震化されたマンションは市場価値も向上し、将来的な売却時にも有利に働くでしょう。何より、住み慣れた我が家で安心して暮らし続けられるという安心感・安全性はお金に代えられない価値です。

管理組合の皆様におかれましては、本記事で述べた耐震診断・補強工事の必要性を十分ご理解いただき、専門家や行政の力も借りながら計画的に耐震化を進めていただければ幸いです。合意形成や資金調達のハードルは決して低くありませんが、国や自治体の支援策、第三者サービスの活用など、使えるものは最大限に活用して前向きに取り組んでください。

マンションの耐震化は、そこで暮らす自分たち自身と大切なご家族の命を守るための使命です。築50年を迎えるマンションでも、適切な補強工事を行えば十分安全で快適な住まいに生まれ変わります。ぜひ管理組合一丸となって耐震化への第一歩を踏み出しましょう。

マンションの「建替バリュー」 を見える化する「スマート建替」

  • 「スマート建替」は、マンションの「建替バリュー」がマップ上で分かる、ディー・エヌ・エー(DeNA)グループの無料のサービスです(特許出願中)。※建物を建て替える価値を自動で計算しマップ上で表示するWEBサービスは、日本初となります。(2024年6月・当社調べ)
  • 「建て替えるべきか」、「耐震補強工事をするべきか」、「修繕工事をするべきか」、「それぞれの経済性の評価、検討プロセスはどうしたらいいのか」、といったお悩みを、スマート建替の専門的なアドバイスとサポートで解決します。
  • 「耐震補強工事」「修繕工事」については、「スマート修繕」で各種支援をさせていただきます。「スマート修繕」では、担当コンサルタントが、建物調査診断から、工事会社のご紹介、見積取得、工事内容のチェック、契約、工事完了までをワンストップでサポートいたします。

電話で無料相談

0120ー091ー640

24時間対応通話料・相談料 無料

Webから無料相談

専門家相談する

記事をシェア

本記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

本記事の監修者

遠藤 七保

遠藤 七保

大手マンション管理会社にて大規模修繕工事の調査設計業務に従事。その後、修繕会社で施工管理部門の管理職を務め、さらに大規模修繕工事のコンサルティング会社で設計監理部門の責任者として多数のプロジェクトに携わる。豊富な実務経験を活かし、マンション修繕に関する専門的な視点から記事を監修。

二級建築士,管理業務主任者

0120ー091ー640

24時間対応通話料・相談料 無料

スマート修繕なら

適正価格の工事を実現

0120ー091ー640

24時間対応通話料・相談料 無料

telWebで無料相談する
tel電話で無料相談する(24時間対応)

※携帯・スマートフォンからも通話料無料