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マンションの建て替えとは?、費用負担額や流れを徹底解説

耐震補強、建て替え、敷地売却

2024/09/03

マンションの建て替えとは?、費用負担額や流れを徹底解説

マンション老朽化後の選択肢である「建て替え」。 この記事では、建て替えについて検討から実施までの流れ、建て替えにかかる費用、自己負担額の相場といった「お金の問題」等について詳しく解説していきます。これらの情報が少しでも皆様のお役に立つと幸いです。

目次

  1. 古いマンションの建て替えは実際にあるの?
    1. 老朽化マンションが抱える問題
      1. マンションの建て替えが進まない理由・問題点
        1. 問題:住民の反対が多い・賛同を得づらい
        2. 問題:決議されるまでの流れが複雑
        3. 問題:既存不適格のマンションの存在
      2. 建て替えができない場合はどうなる?
        1. 建物の寿命はいつ頃?耐用年数とは
          1. 法定耐用年数について|法律上の耐用年数
          2. 物理的耐用年数について|寿命としての耐用年数は何年?
          3. 実際に立て替えされたマンションの築年数
        2. マンションの建て替えの流れ
          1. プロセス①:準備段階
          2. プロセス②:検討段階
          3. プロセス③:計画段階|建替組合の設立〜権利変換計画の認可
          4. プロセス④:実施段階
        3. マンションの建て替えにかかる費用負担
          1. 建て替えにかかる費用項目
          2. 自己費用負担の金額相場は〜3000万円
          3. 費用負担が少なくなる場合も
        4. 分譲マンションの建て替えが決議された場合の対処法
          1. 分譲マンションの建て替えで立ち退き料は出る?
          2. 建て替えに「賛成」する場合
          3. 毎月支払っている修繕積立金は使えないの?
          4. 建て替えに「反対」する場合
          5. 反対交渉で注意すべきこと
          6. 物件の売却・住み替えの検討
        5. 賃貸マンションの建て替えが決議された場合の対処法
          1. マンションの建て替え事例・実績
            1. 事例①:単棟型
            2. 事例②:団地型
            3. 事例③:団地型
          2. マンションの「建替バリュー」 を見える化する「スマート建替」のご紹介

            古いマンションの建て替えは実際にあるの?

            1950年代に「宮益坂ビルディング」が日本初のマンションとして誕生してから、これまで多くのマンションが建築され続けています。2022年の国土交通省の発表によると、築40年以上の高経年マンションは115.6万戸あり、多くの古いマンションにおいて劣化が進み、外壁等の剥落、鉄筋の露出・腐食、給排水管の老朽化などの不備が報告されています。

            それにも関わらず、実際に建て替えが実施された築40年以上の古いマンションは270件(2022年4月時点)と実績件数は多くありません。マンションの建て替えが進まない背景には、マンションの建て替えが決議されるまでの流れが複雑な上、マンションの居住者から賛成を得ることが困難など、様々な要因があります。

            しかし、老朽化したマンションが放置されることに対する安全面・経済面などの懸念から、マンションの建て替えをスムーズに行うための手続きやルールをまとめた法律「マンション建替円滑法(正式名:マンションの建替え等の円滑化に関する法律)」が成立しました。国を挙げて古いマンションの建て替え支援や法律整備が進んでいます。

            国の後押しを受けて、今後は多くの古いマンションが建て替え対象として検討が進められていくと考えられます。

            参考:国土交通省「マンションを取り巻く現状について」

            老朽化マンションが抱える問題

            第三者マンションの老朽化問題とは、建設から何年も経過して劣化したマンションが増加することで引き起こされる様々な社会問題のことを指します。

            マンションは一般的に管理組合によって、定期的に大規模修繕工事などを経て維持・管理されますが、経年によって直しきれない欠陥が積み重なっていくことで、建物や設備の劣化が進行していきます。

            分譲マンションの場合、管理・維持にかかる予算として、「修繕積立金」を住民が負担しているのが一般的ですが、修繕積立金が足りなかったり、回収が難しかったり、何らかの理由で事前の修繕計画が破綻していたりすることがあり、管理が行き届かなくなっているマンションもしばしばあります。

            こうした状態に陥ると、メンテナンスによって老朽化を食い止めることが難しくなり、老朽化マンションが増えてしまいます。大規模修繕をしっかり実施できなくなり、維持・管理が難しくなったマンションでは、早い段階での建て替えが必要となってくる場合があります。

            マンションの建て替えが進まない理由・問題点

            前述したような背景から、多くのマンションで建て替えが必要となっているにも関わらず、実際は建て替えしたマンションは多くありません。その理由として、老朽化したマンションの建て替えが決議されるまでの流れが複雑なことや、マンションの居住者から賛同を得ることが困難なことなど、様々な要因があります。マンションの建て替えに関する問題点と背景をいくつかご紹介します。

            問題:住民の反対が多い・賛同を得づらい

            分譲マンションの建て替えが進まない理由のひとつに、住民から建て替えへの賛成決議を得られにくいという問題があります。住民が反対する理由としては、建て替えに必要な自己負担額が大きいという経済的な理由や、住民に高齢者が多い場合は身体的・精神的な負担が大きいことなどがあります。

            費用面では、マンションの建て替えに伴う自己負担が大きいだけでなく、建て替え中の期間に仮住まいの費用を負担しなくてはならなかったりと、経済的な費用負担はかなり大きいものとなります。仮住まいを経て生活環境が大きく変わることは、高齢者にとっては身体的にも負担が大きいことでしょう。

            建て替えが必要なマンションでは、建て替えのメリット・デメリットを住民に正しく伝えられる建て替えに詳しい人(ゼネコンやデベロッパーの人材が理想)が理事側にいることが重要です。

            問題:決議されるまでの流れが複雑

            分譲マンションの建て替えが進まない理由に、マンションの建て替えが決議されるまでの流れが複雑ということがあります。

            マンションを建て替えるには、区分所有法に基づき、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要である法律で定められています。この「議決権」というのは、マンションの各区分所有者の共有部分の持分割合のことを指します。※2024年の法改正で、「所在不明者を除く4分の3の賛成」に要件が緩和される見通しです(2024年2月現在)。

            マンションの建て替えが検討されることになった場合、建替組合が中心となってプロジェクトを推進していきますが、多くの住民からの理解を得て賛成を集めたり、行政や近隣住民とのすり合わせを行って理解を求めるといったハードルが非常に高く、賛成決議まで持っていくのは非常に難しい状況です。

            問題:既存不適格のマンションの存在

            既存不適格マンションとは、マンションが建てられた当時は問題がなかったものの、その後の法律改正や都市計画の変更などによって、現在の法律に適合しなくなったマンションのことです。既存不適格なマンションが建っていること自体は違法建築物とは見なされませんが、建て替えをするときには現行の建築基準法に適合させる必要があります。

            もし、現在住んでいるマンションが既存不適格マンションだった場合、これから建築する新しいマンションは、現在の法律に適合したマンションを建設しなければならないため、現在よりも小さいマンションになるか、隣の敷地を購入して敷地を拡張するか、そもそも建て替えが困難となる場合があります。

            こうした物件の場合は、住民への費用負担が大きくなったり、マンション自体が小さくなる等のデメリットが生じるため、通常の建て替えよりも住民の理解や賛成を得ることが困難になることがあります。

            建て替えができない場合はどうなる?

            前述したような様々な問題から、建て替えが必要なマンションでもなかなか建て替えが決議されずにプロジェクトを進められない物件が多くあります。マンションの建て替えができない場合はどのような選択肢が考えられるでしょうか。

            答えは、日々のメンテナンス/定期的な改修によって、なるべく建物の寿命を延ばしていくこととなります。

            国土交通省の資料によると、マンション大規模修繕工事の平均修繕周期としては、13年が最も多く、次いで12年、14年、15年と、全体の約7割が12~15年周期で大規模修繕工事が実施されているようです。建物は劣化していくため限界はありますが、修繕や改修などのメンテナンスを適切に続けることによってマンションの寿命は延びていきます。

            ただし、維持・管理にも費用がかかることから、修繕積立金の状況次第では、大規模改修ができなくなることや、修繕積立金を増額しなくてはならないケースがあるため注意が必要です。

            参考:マンションの大規模修繕の費用相場は?大規模修繕の周期や修繕積立金が不足する場合の対応などについて解説

            建物の寿命はいつ頃?耐用年数とは

            マンションは築年数が経過するごとに老朽化していくことから、古いマンションはいずれ建て替え時期がやってきます。では、マンションの建て替え時期は建てられてから何年が目安になるのでしょうか。マンション建て替えの目安となる不動産の寿命について、法定耐用年数という考え方と、物理的耐用年数という考え方をそれぞれご説明します。

            法定耐用年数について|法律上の耐用年数

            マンションを含む住宅用の建物には、それぞれ法律で「耐用年数」という期間が定められており、鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は47年とされています。

            法定耐用年数とは、マンションの資産価値を減価償却していき、不動産の資産価値がゼロになる年数を指します。

            あくまで法律で画一的に定められた基準なので、マンションの耐用年数と、マンションの寿命は別だということを理解しましょう。また、税制上定められた年数であり、売却をするにあたって価値がゼロ円になるという意味でもないため、売却するときに、買い手から見て資産価値がある物件であれば値段がつくので安心してください。

            参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数(建物/建物附属設備)」

            物理的耐用年数について|寿命としての耐用年数は何年?

            マンションには老朽化や劣化によって耐用年数を算出する「物理的耐用年数」という考え方があります。法定耐用年数よりも、この物理的耐用年数の方がマンションの実際の寿命に近い考え方です。

            建築の技術は進歩しているので、鉄筋コンクリートで作られたマンションであれば、適切に維持・管理されることで寿命は100年を超えると言われています。国土交通省による調査によると鉄筋コンクリート造の建物の効用持続年数(寿命)は120年、外装仕上の延命措置を行えば最長で150年まで住み続けることができるというデータもあります。

            参考:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」

            しかし、マンションの寿命は耐震基準やメンテナンス状況、コンクリートの強度といった様々な要因によって左右されるため、一概に定められるものではないのが現実です。

            実際に立て替えされたマンションの築年数

            それでは、実際に建て替えがされたマンションは、どのくらいの築年数で建て替えに繋がっているのでしょうか。

            ある「建物の平均寿命」の調査(2011年)によると、新築マンションが建設されてから、取り壊されるまでの平均年数は68年だったという報告があります。実際には、物理的耐用年数を迎える前に、余裕を持って建て替えが行われているということになります。

            購入するマンションの築年数が、住んでいる間に60年を超えてくることが考えられる場合は、いずれ建て替えや売却もあり得るということを念頭に入れて購入を検討するのが良いでしょう。

            マンションの建て替えの流れ

            マンションの建て替えを検討し始めてから完了するまでに必要な流れを解説します。マンションの建て替えまでの流れは法律で規定された流れに従うことはもちろん、失敗しないためにも、適切なタイミングでマンションの建て替えに精通した専門家に相談をすることが大切です。

            プロセス①:準備段階

            まず、マンションの建て替えを検討するための準備段階として、建て替えをするべきかという協議が行われます。建物の老朽化による建て替えの場合、およそ築年数が40年を過ぎたあたりから建物の状態をチェックし始めて、専門家を交えながら管理組合でマンションの建て替えに関する協議を開始します。

            プロセス②:検討段階

            管理組合での協議を経て、マンションの建て替えが必要だという課題感が顕在化してきた段階で、区分所有者の間でマンションの建て替えに関する議論・検討を開始します。以下のような事項を定めた計画案が固まったところで、マンション住民への説明会を経て、管理組合の総会において「建て替え決議」を行います。

            実際にマンションの建て替えが合意・決議されるためには、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が条件になります。※2024年の法改正で、「所在不明者を除く4分の3の賛成」に要件が緩和される見通しです(2024年2月現在)。

            プロセス③:計画段階|建替組合の設立〜権利変換計画の認可

            マンションの建て替えに合意した区分所有者は、5人以上が共同して計画を詰めていくための建替組合を設立しなければなりません。また、建替組合を設立する際には、都道府県知事または市長の認可を得る必要があります。

            建替組合は、下記のような項目を協議しながら建て替えに向けた計画を詰めていきます。

            ・計画/設計/施工をするデベロッパーの選定

            ・建て替え計画(建築・事業)の検討

            ・区分所有者との意見交換など合意形成の準備

            ・管轄行政との調整、近隣住民との合意形成

            建替組合の認可公告が公示されてからは、マンションの建て替え反対者への区分所有権と敷地利用権の売渡し請求は、建替組合が主体となって進めることになります。

            そして「権利変換」を希望しない区分所有者は、建替組合の認可公告が出された日から30日以内に、権利変換を希望せず、金銭の給付を希望する旨を申し出る権利があります。

            プロセス④:実施段階

            最終的な実施段階に来ると、マンションの区分所有者の権利(区分所有権、敷地利用権、住宅ローンの抵当権など)を、古いマンションから新しいマンションへ移すための手続きを行います。

            新しいマンションの建て替え工事を行っている期間は、居住者は一時的に仮住まいに引っ越さなければなりません。古いマンションの住宅ローンが残っている場合、仮住まい期間中は住宅ローンの支払いと仮住まいの家賃の両方を負担しなければならないことに注意しましょう。

            マンションの明渡しが完了し、無事に新しいマンションの工事が実施できる状況が整ったら、解体・除却・建て替えの順で工事を実施します。

            そして、新しいマンションの建て替え工事が完了したら、建替組合は速やかにその旨を公告し、かつ関係権利者に通知を行います。建替組合は、その後遅滞なく、建て替え後のマンションに関する各権利について、必要な登記申請を行う必要があります。その後、建替組合を解散します。その際は、建て替え事業の完成によって解散するための認可を都道府県知事または市長に対して申請します。そして、解散の認可がなされた場合、その旨が公告されて建て替えプロジェクトが完了となります。

            マンションの建て替えにかかる費用負担

            マンションの建て替えが行われる場合、建て替えに賛成の立場として参加すると、新しいマンションに移り住むことになりますが、今後の建て替えの、ほとんどのケースで費用を支払う必要があります。マンションの建て替えにかかる費用はどのくらいになるのかを解説していきます。

            建て替えにかかる費用項目

            マンションの建て替えにかかる費用として、「解体費用」、「建設費用」、「設計費用」、「事務費用」、「仮住まい費用」、「申請/登録費用」などが挙げられます。

            解体費用や設計・施工費用は、マンションの周辺環境、建物の構造、階数や延床面積などの規模、新しいマンションで採用する設備のグレードや規模などによって異なります。マンションの延床面積がより広く、高さが高く、さらにグレードが高い物件ほど建て替え費用が高額になることが多いでしょう。

            自己費用負担の金額相場は〜3000万円

            【実現する】マンションの建て替えにおける自己負担額(費用)の目安は、1戸あたり〜3000万円と言われています。ただし、この費用は建て替え前後の建物の大きさ(容積)によって大きく変動するものであり、一概には言えません。よって、この金額はあくまでも一参考とご理解ください。

            また、マンションの建て替えに必要な費用負担のうち、特に注意しなくてはならないのが、仮住まいにかかる費用です。マンションの建て替え工事を行っている期間中は、一時的に住む不動産を探して引っ越しをしなくてはなりません。住宅ローンが残っている場合は、その住宅ローンの返済額と仮住まいの費用の両方を負担する必要があるので注意が必要です。

            費用負担が少なくなる場合も

            マンションの建て替えにかかる費用は高額となることが一般的ですが、場合によっては住民の自己負担額が少なくなることがあります。

            建築物には「容積率」という、建物が建っている敷地の面積に対して、建物の延床面積が認められる基準が地域ごとに定められています。古いマンションが容積率を十分に生かし切れていないことがあるため、新しいマンションではこの容積率をいっぱいになるまで活用して建て替えることができれば、増やした分を売却することで、その資金を建て替え費用の一部として充当することができます。

            ただし、既存のマンションがすでに容積率をいっぱいまで活用している場合は、今以上の延床面積にすることができないので、自己負担を軽減することは難しくなります。

            お住まいのマンションの容積率に余裕がある場合は、建て替えの際の自己負担額を軽減することができるかもしれません。

            分譲マンションの建て替えが決議された場合の対処法

            購入した分譲マンションで建て替えが決議され、自分に賛成か反対かどちらかの回答を求められた場合には、自己負担しなくてはいけない費用の有無や、その負担額が判断材料となるでしょう。

            例えば、分譲マンションの建て替えで負担しなくてはならない費用が少額であれば、賛成するかもしれませんし、提示された建て替え費用を負担することができない場合は、反対するか、不動産を売却するという選択を迫られることになります。分譲マンションの建て替え決議を提示された少なくない住民にとって、「自己負担しなくてはいけない費用」が賛成または反対の判断を分ける基準となるでしょう。

            分譲マンションの建て替えに賛成するか、反対するかを決める際は、引越し/仮住まい費用を含めたすべての費用を認識したうえで建て替え費用の負担ができるのかを慎重に検討することが大切です。

            分譲マンションの建て替えで立ち退き料は出る?

            お住まいのマンションが分譲マンションの場合には、立ち退き料はありません。しかし、分譲マンションから立ち退く場合には、「修繕積立金の清算金」と「持分の売却金額」が手元に入ることになります。

            分譲マンションから立ち退く場合、今まで積み立ててきた修繕積立金の返還を請求できるほか、売渡請求権というのがあり、分譲マンションの建て替えに反対している区分所有者が、その住居の持分を確定し、建て替えに参加する区分所有者からその持分(区分所有権と敷地利用権)を時価で売却するように請求できる権利があります。賃貸マンションを立ち退く際にもらえる立ち退き料とは異なりますが、分譲マンションから立ち退く場合は、「修繕積立金の清算金」と「持分の売却金額」でそれなりに大きな金額が手元に入るため、新しい入居先を探すための費用や引っ越しの費用に使い、より良い生活をスタートさせることができるでしょう。

            建て替えに「賛成」する場合

            建て替えに賛成する場合は、建て替え費用を負担して新しいマンションに再入居することになります。

            毎月支払っている修繕積立金は使えないの?

            マンションの居住者は、マンションの修繕に使われる費用として修繕積立金を毎月積み立てています。

            建て替えに賛成する人の立場では、修繕積立金を建て替えの費用に利用したいと考える方もいますが、国土交通省が定めている「マンション標準管理規約」では、マンションの建て替えで修繕積立金を取り崩すことは、原則禁止とされています。

            建て替えにかかる費用に修繕積立金は使えないので、建て替えのためにかかる費用は自己資金を用意する必要があることを理解しておきましょう。

            建て替えに「反対」する場合

            マンションの建て替えに反対している場合、区分所有法に基づき、建て替えに反対する区分所有者には、建て替えが決議された場合に、マンションの建て替えに参加しないことを選択する権利が与えられます。参加しないということは、建て替えにかかる費用負担をせずに、別の住居に住み替えるということです。

            反対交渉で注意すべきこと

            反対の立場で交渉をしていると、つい熱くなってしまうことがありますが、できる限り争わずに穏便に話し合いで解決していくことが、安心して契約を進める鍵になります。話し合いだけでは解決させられず、裁判に発展してしまった場合、裁判費用を自分で負担することになるため、最終的には大きな損をしてしまいます。できる限り、穏便に話し合いで解決していくことをおすすめします。

            物件の売却・住み替えの検討

            マンションの建て替えが決まった場合、組合から売渡請求権を実行される前に、マンションを売却する方法もあります。

            建て替えが決まっている中古マンションを購入する人は、物件の売買費用とマンションの建て替え費用を支払うデメリットを理解したうえで、マンション持分売買のお金がもらえることや建て替え後に新しいマンションに住むことができるメリットを大きいと考えて購入を決めています。

            建て替えが決まっている中古マンションなので、他の不動産と比較して相場通りの売却が難しい可能性はありますが、立ち退きで修繕積立金の清算金と持分の売却金額を得る場合よりも売却した方がメリットが大きいこともあります。

            良い価格で売ることができれば、売却益を元手に新しい入居先を探すことができるでしょう。もし、マンションの売却を検討する場合は、仲介業者に連絡してマンションを査定してもらうことから始めてみましょう。

            賃貸マンションの建て替えが決議された場合の対処法

            賃貸マンションを建て替えることが決議された場合、どうなるのでしょうか。

            賃貸マンションの場合、住民は建て替え時に立ち退きを要求されることが多くありますが、このときに立ち退き料をもらえることがあります。立ち退き料とは、物件の管理者が入居している人に不動産から立ち退いてもらうために支払うお金です。住民が引っ越すことになった場合に発生する費用負担・精神的負担を少しでも軽減させることで、なるべく気持ちよく立ち退いてもらうために支払われます。

            ただし、賃貸マンションの建て替えでは法律で立ち退き料を支払わなくてはならないという決まりはありません。管理者には立ち退き料を支払う義務がないので、賃貸マンションによっては建て替えの際に立ち退き料がもらえないケースもあります。

            立ち退き料の金額相場はどのくらいなのでしょうか。前述の通り、賃貸マンションの建て替えをする場合、管理者は立ち退き料を支払う義務があるわけではないため、明確なルールはありません。しかし、一般的な相場としては、賃料の6ヶ月〜10ヶ月分が支払われるケースが多いようです。しかし、物件によってはこれよりも少ない場合やもらえないこともあるため、過度な期待はしないようにしましょう。

            住民としては少なからず負担がかかることになるため、納得がいかないこともあるでしょう。立ち退き料がもらえない場合は、立ち退き料を請求したり、立ち退きを拒否したりと条件を提示することも考えられますが、トラブルが生じないように慎重に対応する必要があります。

            マンションの建て替え事例・実績

            分譲マンションの建て替え事例にはどのようなものがあるのでしょうか。前述の通り、分譲マンションの建て替えに繋がった物件は件数としてそれほど多くないものの、いくつかの事例があります。

            建て替えを行ったマンションの事例をいくつか紹介します。

            事例①:単棟型

            日本初の分譲マンションの建て替え「宮益坂ビルディング(東京都渋谷区)」

            1953年(昭和28年)竣工、東京都により分譲されました(地下1階と1階が店舗、2階~4階が事務所、5~11階が住居の複合用途型のマンション)。その後、築60年を超え建物の老朽化、耐震性の不安などを理由に建替プロジェクトが進められました。

            敷地面積は変わらないものの、延床面積は7,872.62㎡ から14,553.41㎡に大幅拡大、地上11階地下1階建の1棟マンションが 地上15 階地下2階建の1棟マンションに建て替えられました。

            出典:一般社団法人再開発コーディネーター協会

            事例②:団地型

            マンション建替法による最大規模の建て替え「諏訪2丁目住宅(東京都多摩市)」

            1971年(昭和46年)3 月竣工、建物の老朽化(決議時点で築 38 年)、住民の高齢化、耐震への不安などを理由に建替プロジェクトが進められました。優良建築物等整備事業や先導型再開発緊急促進事業(現防災・省エネ)の補助制度を利用、敷地面積は変わらないものの、延床面積は34,037.13㎡から122,386.35㎡に拡大、地上5階の23棟から地上11階・14階(一部地下1階)の7棟マンションに建て替えられました。

            出典:一般社団法人再開発コーディネーター協会

            事例③:団地型

            桜上水団地(東京都世田谷区)

            1965年(昭和40年)竣工、耐震性の不安、建物の老朽化、バリアフリー未対応(高齢者が多い)、二方向避難不十分、セキュリティ面などを理由に建替プロジェクトが進められました。東京都マンション建替え円滑化モデル事業の補助制度を利用、傾斜地を活用した半地下駐車場整備による空地を確保するなど、延床面積30,500㎡から98,854㎡に拡大、地上4~5 階建17棟から地上6~14階地下1階建の8棟マンションに建て替えられました。

            出典:一般社団法人再開発コーディネーター協会

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            この記事の著者

            鵜沢 辰史

            鵜沢 辰史

            信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

            この記事の監修者

            別所 毅謙

            別所 毅謙

            マンションの修繕/管理コンサルタント歴≒20年、大規模修繕など多くの修繕工事に精通。管理運営方面にも精通しており、アドバイス実績豊富。 過去に関わった管理組合数は2千、世帯数は8万を超える。 メディア掲載「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、「NIKKEI NEWS NEXT」、「首都圏情報ネタドリ!(NHK)」、「めざまし8」、「スーパーJチャンネル」。

            二級建築士

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