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マンションの敷地売却と要除却認定制度とは?

耐震補強、建て替え、敷地売却

2024/09/03

マンションの敷地売却と要除却認定制度とは?

老朽化マンションをどうするか?、「大規模修繕により延命する」「建て替えをする」という選択がありますが、その他選択肢として「敷地売却」というものがあります。マンションの敷地売却制度とは、所有者がマンションの敷地を一括して買受人(デベロッパーなど)に売却する仕組みのことです。 また、敷地売却に関連して要除却認定という制度があります。建物の老朽化や耐震性の低下、建築基準法などに適合しなくなった場合に、市区町村長が建物の除去を命じる制度です。要除却認定制度を利用して敷地売却をすることで、区分所有者がメリットを享受できることもあります。 この記事では、マンションの敷地売却と要除却認定制度について詳しく解説します。これらの情報が少しでも皆様のお役に立つと幸いです。

マンションの敷地売却とは?

敷地売却とは、その名の通り「マンションの土地を一括して売却することができる」という方式です。敷地売却を選択するメリットについては後述しますが、修繕や建て替えをするのではなく、マンションの敷地をまとめて売却してしまい、それにより得たお金を区分所有者に分配するというものになります。区分所有者が得たお金は各自でどうするかを決めることができるので、新たなマンションを購入してもよいですし、跡地に建て替えられる新築マンションの購入資金に充ててもよいでしょう。

ただし、マンションの敷地売却を行うには、いくつかの条件があります。

  • 要除却認定を受けること
  • 敷地売却決議を可決させること(区分所有者等の5分の4以上の同意が必要)
  • 敷地売却組合を設立すること
  • デベロッパーなどへの売却後、不同意者(反対した人)に分配金を支払うこと

マンションの敷地売却を実行するためには、これら4点を実施する必要があります。

国土交通省によると、マンションのストックは、2020年(令和2年)末時点で約 675 万戸、このうち旧耐震基準に基づき建設されたものは約 103 万戸となっており、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの巨大地震の発生が切迫しているであろう状況下において、特に既存のマンションの耐震改修や建て替えによる耐震化については、喫緊の課題となっています。耐震改修については、2013年(平成 25 年)の耐震改修促進法の改正により、耐震性不足のマンションの耐震改修に係る決議要件の緩和等を行っており、次の課題として、建て替えの促進策が強く求められていました。このため、2014年(平成 26 年)に「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替円滑化法)」が改正され、「マンション敷地売却制度」、「容積率の緩和特例」が創設されたほか、2020年(令和2年)6月の改正により「マンション敷地売却制度」および「容積率の緩和特例」の対象となる除却の必要性に係る認定の対象の拡充ならびに団地における敷地分割制度が創設されました。これにより「マンションの建替え等」が促進されています。

「マンションの建替え等の円滑化に関する基本的な方針」において「国は、マンションの建替え等の進め方に関する実務的指針を作成し、地方公共団体と連携し、その普及に努めることとする。」とされたことを受け、耐震性不足のマンションに係るマンション敷地売却の進め方に関する指針として、国土交通省が「マンション敷地売却ガイドライン」を作成していますので参考にしてください。

参考:国土交通省「マンション敷地売却ガイドライン」

要除却認定制度とは?

マンションの敷地売却を選択するためには、要除却認定が必要です。

要除却認定とは、危険な状態にあるマンションに対して、特定行政庁が除却の必要性を認定する制度のことです。マンションの老朽化が進み維持修繕が困難なマンションの建て替え等の円滑化を図るため、要除却認定の対象が拡充され、生命・身体に危険性があると認められるマンションや、住宅における生活の基本的条件であるインフラに問題があると認められるマンションが要除却認定制度を利用できるマンションとなっています。

具体的には、以下のいづれかの状況にあるマンションであることが要件となります。

  • 耐震性の不足
  • 火災に対する安全性の不足
  • 外壁等の剥落により周辺に危害を生ずるおそれ
  • 給排水管の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
  • バリアフリー基準への不適合

これらの状況のいずれかであり、かつ「自力で改修、建て替え等をすることができない」というマンションが要除却認定を受けることができます。該当するマンションは、要除却認定を特定行政庁に申し出て認定を受けることにより、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替円滑化法)」に基づいて敷地売却に向けて進めることができます。

具体的な手続きや要除却認定を受けるまでの流れは、国土交通省が「要除却認定実務マニュアル」を作成していますので参考にしてください。

参考:国土交通省「要除却認定実務マニュアル」

要除却認定制度を利用してマンションの敷地売却をする場合

要除却認定制度を利用してマンションの敷地売却をすることについて、どのようなメリットがあるのでしょうか。

前提に戻りますが、マンションが旧耐震基準やボロボロの状態で自分たちで修繕や建て替えをすることができないという状況にあるため、言い換えると「お金がない!※」状況下にあるケースが非常に多いということになります。

※お金がないマンションでも「立地、容積の余剰等の条件に優れ、建て替え後の資産価値が高ければデベロッパーが建て替えてくれる」との希望を抱きがちですが、建て替えは条件の良い物件から優先的に実施されていく傾向にあるため、そのようなケースは多くないと考えられます。

自力で建て替えることができないマンションは、地震が発生した際など、近隣に被害を及ぼす影響があることから、行政側は「耐震性のある建物」に変えることを重要視しています。そのため、要除却認定を受けると、「マンション建替円滑化法」にて設定している「容積率の緩和特例制度」を利用することができます。

容積率の緩和特例制度を利用することで、建て替えデベロッパーが、既存マンションを建て替えるときに「既存マンションより規模を大きくして建て替えることができる」ということになる訳です。

これにより、二つのメリットが発生します。

  • 建て替え後の容積が大きくなることにより、デベロッパーが参画、建て替えが実現する可能性が出てくる。
  • 建て替え後の容積が大きくなることにより、マンションの資産価値が上がり、単純にマンションを売却するよりも好条件となる可能性が出てくる。

敷地売却後について

敷地売却後は、早晩に既存マンションの解体が始まり、新たな建物が建設されていくでしょう。敷地を購入したデベロッパー等と事前に協議を進めているので、どうようなマンションが建つのか、もともとの区分所有者は、有利な条件を提示されていることもありますので、そのあたりはご自身で確認、検討してください。自力での建て替えや修繕ができる資金がない場合は、敷地売却制度を利用して資金調達を行い、新たな居住空間で生活を送ることも選択肢となります。

まとめ

本記事では、敷地売却と要除却認定制度、そしてそれらがどのように連携して機能するかについて解説しました。

敷地売却は、区分所有者にとって非常に大きな決断であり、様々な法律や規制を理解する必要があります。特に要除却認定制度を利用すると、売却価格に大きな影響を及ぼす可能性があり、そのプロセスを正しく理解することが重要です。

また、専門家の助言を得ることで、より適切な判断が可能となります。敷地売却やマンションの建て替えは大きな決断ですが、適切な情報と支援があれば、成功につながる可能性が高まります。

この記事が、敷地売却やマンションの建て替えを考えている方々の一助となれば幸いです。

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この記事の著者

鵜沢 辰史

鵜沢 辰史

信用金庫、帝国データバンク、大手不動産会社での経験を通じ、金融や企業分析、不動産業界に関する知識を培う。特に、帝国データバンクでは年間300件以上の企業信用調査を行い、その中で得た洞察力と分析力を基に、正確かつ信頼性の高いコンテンツを提供。複雑なテーマもわかりやすく解説し、読者にとって価値ある情報を発信し続けることを心掛けている。

この記事の監修者

別所 毅謙

別所 毅謙

マンションの修繕/管理コンサルタント歴≒20年、大規模修繕など多くの修繕工事に精通。管理運営方面にも精通しており、アドバイス実績豊富。 過去に関わった管理組合数は2千、世帯数は8万を超える。 メディア掲載「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、「NIKKEI NEWS NEXT」、「首都圏情報ネタドリ!(NHK)」、「めざまし8」、「スーパーJチャンネル」。

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